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相続法の改正について(その3: 特別受益の持戻し免除の意思表示推定)

2019.05.28 谷井 智

今回は,相続法改正のうち,配偶者保護のための方策(特別受益持戻し免除の意思表示推定)について,改正ポイントを説明させて頂きます。
 
今回の相続法改正は,配偶者の死亡により残された他方配偶者の生活保障の必要性が高まっているという観点から,生前贈与を促進することが検討され,相続税法上の贈与税の特例制度(相続税法21条の6)を参考に,一定の要件を満たす場合には生前贈与の持戻し(生計の資本として生前贈与があった相続人がいる場合は,生前贈与の額を遺産分割の際に考慮する計算方法)を免除する意思があったことを推定する規定(民法903条4項)が設けられました。
 
被相続人(亡くなられた方)が生前贈与(特別受益)は遺産に入れないと意思を表しているのであれば考慮に入れる必要はないのですが,実際にはそのような意思表示が証拠(書面など)として残っている場合は多くありませんので,生前贈与を受けた人は,遺産分割時に貰える額が少なくなるということがあります。これを,婚姻期間が20年以上の夫婦による贈与(又は遺贈)で,居住用の建物・敷地がその対象であった場合は,贈与した側が生前贈与は遺産に入れないという意志表示が証拠として残っていない場合であっても,そのような意思表示があったものと推定することになりました。
これによって,例えば夫が妻に自宅を贈与したあとで亡くなっても,遺産分割で妻が生前贈与を理由に預貯金を殆どもらえないというような事態が起こりにくくなりました。
ただし,被相続人が「相続の際には特別受益として扱うように」というような書類を残していた場合には,この推定は覆ることになります。また,婚姻期間20年は戸籍上の届出が基準になり,内縁関係や同じ相手と再婚した場合の計算については解釈に委ねられることになろうかと思います。
 
本改正の施行日は2019年7月1日となっております。
 
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